中勘助

中勘助7-夜歩く-

中勘助7-夜歩く- 夜,星を見上げる中勘助の「沼のほとり」は,雑誌「思想」に大正十一年七月から連載されました。時期的には話題になった問題作「犬」が「思想7号」に載ったその年のことです。「沼のほとり」は,大正十年一月一日から始まる日記形式の作品…

中勘助6「鳥の物語」

中勘助6-鳥の物語- カタクリ咲く4月11日何と言う暑さでしょうか。今日で4日目です。この暑さは例年ですと5月下旬の頃に感じているものですが・・・。4月の7日夜になんと珍しいハクチョウの鳴き交わす声が北へ遠ざかって行きました。一週間遅れの北帰行で…

中勘助5-水辺の自分その境界の消失-

カタクリまだ咲かず人は何かあるたびに水辺にたたずむ。水辺に立つということは自分では解しえない現実の脈絡もない筋書きを水という鏡に他人事のように写し出すためである。川や海が人の心を写し出す「鏡」となることを知っているからだ。一人つぶやきなが…

中勘助4-水辺に向かう心-

中勘助4-水辺に向かう心- 春霞の伊豆沼 昨日4月5日私が好きな絵にダビット・カスパー・フリードリヒの「海辺に立つ修道士」がある早速見てみましょう。デビット・カスパー・フリードリヒ『海辺に立つ修道士』(部分)1809-10人は水辺に立つと決して後ろを…

中勘助3「銀の匙」の伯母さん

中勘助3「銀の匙」の伯母さん 星の栗駒山への道中勘助はほぼ80歳まで生きたが,生まれた時にはそれは難産で,生まれてからも虚弱体質で,神経過敏で日にちを措かず頭痛に悩まされた子ども時代の苦労を語ったのが,この「銀の匙」という作品である。そうした…

特集 中勘助2「銀の匙」

今朝の内沼手触り,肌ざわり。触覚。そんな視覚以外の感覚をまざまざと喚び起こす読み物がある。そんな読み物に出会うと実に嬉しい。まず,谷崎潤一郎の「美食倶楽部」暗闇の部屋へ通されて女(らしい?)の指で口の中をれろれろと食前のマッサージを受ける。…

中勘助「銀の匙」

中勘助「銀の匙」 月輪舘より 春の終わりの川霧-月輪舘跡から北上川を見下ろす-罔象女ここ半月ほど中勘助を読んでいる。学生時代に「銀の匙」を読んで,その文章の巧みさに唸った。それから四,五年ほどの間は,「あなたが好きな作品は何ですか」と尋ねら…

3.11に寄せて2-祈り-

3.11に寄せて2-祈り- 3月10日午前4時。漁の船が岬をかすめるように進み始めた静かにシャッターを下ろししばらく海に昇る天の川をみつめるこの時,自分が動いて,大切な祈りの静寂を壊してしまうことを恐れる人がひたすらに祈る姿は美しい今朝12日朝の河北…